図 1: ギャスパー・リバーでのキャンプの様子

 

該当部分の概要

レベッカとリチャードはランキン氏の勧めでギャスパー・リバーのキャンプ・ミーティングに参加する。

A GREAT CROWD had already gathered when we arrived at the Gasper River meeting grounds.

私たちがギャスパー・リバーの集会場に着いた時には、すでにたくさんの人々が集まっていて、こんなに大きな群衆を見るのはレキシントンに行った時以来のことだった。(5章 35ページ 第1段落)

 

調査内容

小説内で語られるキャンプ・ミーティングに関して、①背景 ②概要 ③実際の様子 に関してまとめ、その全体像を把握する。

①背景

〇大覚醒(Great Awakening)

The Second Great Awakening was a U.S. religious revival that began in the late eighteenth century and lasted until the middle of the nineteenth century. While it occurred in all parts of the United States, it was especially strong in the Northeast and the Midwest.
「Second Great Awakening – Ohio History Central」より一部抜粋

数度にわたり行われたアメリカにおけるプロテスタント宗派による改宗運動のこと。第一次(1730-1755)、第二次(1790-1840)、第三次(1855-1930)と数度にわたり興った運動であるが、小説内で描かれているのは年代から第二次大覚醒(Second Great Awakening)であると考えられる。このときは、第一次よりも広い範囲(西漸運動によりケンタッキー州もこのとき含まれた)で活動が行われ、メソジストやバプテストが大きく勢力を広げることとなった。

〇ギャスパー・リバーのキャンプ・ミーティングについて
小説内で語られるギャスパー・リバーは、ケンタッキー州に位置するローガン郡を流れる川である。ローガン郡は「悪の巣窟 (Rogues Harbour)」と形容されたように全国で最も危険な場所とされていた。1800年Red River Meeting Houseで行われた最初のキャンプ・ミーティングを機にその治安が大きく変わり始めたとされている。

 

②概要

〇キャンプ・ミーティングについて
19 世紀アメリカで、当時のフロンティア地域にて行われた屋外での宗教復興集会のこと。起源は諸説あるが、1800 年 6 月ケンタッキー州にてジェームズ・マクレディを中心に行われた集会が最初期のものであると考えられ、その後南西部へと広まっていく。 ギャスパー・リバーでのキャンプ・ミーティングは 1790 年代、ジェームズ・マクレディによって建設されたログハウス形式の集会所が用いられた。現在、建物や遺構は残っていないが、当時はあらゆる公衆の集会に用いられ、キャンプ・ミーティングでの使用は一例に過ぎない。 人々は 30 ~ 40 マイルほど離れた場所から集会場に集まりキャンプを行った。

 

③実際の様子に関して

〇キャンプ(camp)
キャンプ・ミーティングの会場。キャンプ・ミーティングはアメリカ合衆国の開拓期である19世紀に当時のフロンティア地域で行われた、野外での宗教復興集会。第二次大覚醒期のキャンプ・ミーティングの発端については諸説あるが、ケンタッキー州でJames McGreadyによって1800年6月に行われた集会と、翌1801年7月に行われた集会が最初期の集会にあたるとされる。

〇講壇(platform)
キャンプ・ミーティングで説教者が立った、屋外型の説教用の台。キャンプ・ミーティングでは、講壇を異なる宗派の説教者が交代で用い、説教を行った。第二次大覚醒期の記録絵には、木造の簡単な造りで、屋根付きの講壇がしばしば描かれている。

〇シェーカー教による参加

“1807:First Shaker converts made at South Union (Gasper), Kentucky, but the society is not gathered until 1811.”
Stephen J. Paterwic, HISTORICAL DICTIONARY of the SHAKERS, Rowman & Littlefield Publishers, 2017, p.xix
1807年:シェーカー教の最初の改宗運動はケンタッキー州のサウス・ユニオン(ギャスパー)で行われたが、共同体としての活動は1811年までなされなかった。

シェーカー教がギャスパー・リバーでの活動を行ったのは1807年という記録があるため、小説で描かれているキャンプ・ミーティングでは正式にシェーカー教としては参加していなかったと考えられる。そのため、ミーティングハウスや歌など、シェーカー教の活動においても見られる単語が用いられているが、それらはここではキャンプ・ミーティングにおけるものであると思われる。

 

まとめ

大覚醒 (Great Awakening)と呼ばれる、プロテスタント宗派の改宗運動の高まりは、アメリカにおける西部開拓を背景として、数度に渡って興った。小説の舞台となったケンタッキー州においては、第二次大覚醒での活動が行われ、その一環としてキャンプ・ミーティングなどが開かれた。
キャンプ・ミーティングでは、ワゴンなどで人々が集まり、キャンプを開いて各宗派の講演を聴講した。シェーカー教もこのキャンプ・ミーティングに参加しており、その後のケンタッキー州での活動の端緒となった。

 

執筆:月森十色

参考文献・図版出典

参考文献

・「Second Great Awakening – Ohio History Central」
https://ohiohistorycentral.org/w/Second_Great_Awakening?rec=1532(2021年1月9日最終アクセス)
・John E. Kleber『The Kentucky Encyclopedia』(University Press of Kentucky,1992)p568
・John B. Boles『The Great Revival: Beginnings of the Bible Belt』University Press of Kentucky、1996、p. 8, 100
・「Historical Foundation of the Cumberland Presbyterian Churchand the Cumberland Presbyterian Church in America」
http://www.cumberland.org/hfcpc/churches/GasRivKY.htm(2021年1月9日最終アクセス)
・「Encyclopedia Britannica-camp meeting」
https://www.britannica.com/topic/camp-meeting(2021年1月9日最終アクセス)
・Christianity.com-The Second Great Awakening
https://www.christianity.com/church/the-2nd-great-awakening-11630336.html(2021年1月9日最終アクセス)
・Stephen J. Paterwic『HISTORICAL DICTIONARY of the SHAKERS』(Rowman & Littlefield Publishers、2017)p.xix

図版出典

図1:「Wikimedia Commons:Camp meeting」 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Camp_meeting.jpg (2021年4月12日最終アクセス)