私はよく眠れず、朝早く、(1)起床の鐘が鳴る前に起きた。窓の外はまだ暗かったが、外で鳴いたりさえずったりしている鳥たちは、陽の光がすぐに立ち上がるであろうことを伝えていた。ある鶏が、家禽場の下手で鳴くと、すぐに別の一羽が鳴き、そしてついには、たくさんの鶏が鳴き始めた。彼らの鳴き声には、それぞれ非常に異なっていた。あるものは熟達した老練な、年長の鶏の豊かな声……あるものはより短く、より甲高い、しかし最後の音を長い時間発し続けることができる声……またあるものは、高くて耳障りで、ひきちぎれたような、ちょうど若い少年の声が声変わりで急変する時のような声で鳴くのだ。それは、ちょうど鳴くことを学んでいる若い鶏たちだ。しかし、彼らは鳴き声ではどんなに異なっていても、元気さという点ではみな似ていた。彼らが努力していることはたしかだった。

 その日の眠りは不規則で、自分がどこにいるかを忘れる間もなかったので、起きた時に混乱はまったくなかった。私は横になり、別の女性の声を聞いていた。パルミラは私のほうを向いていて、静かに呼吸をしていた。誰かが下のほうでずっといびきをかいていたので、私はレイシーかヴィニーがうつぶせになっているのだと推測した。アニーは少しずっしりと、まるで鼻風邪を患っているかのように重そうに呼吸したが、それは前の晩のすすり泣きが原因だとわかっていた。アマンダはパルミラのように静かだった。

 私たちはみんなここで、この部屋の中で巡り合わせたのだと思った。私たちはみんな数年来の隣人で、みんなブラザー・ランキンの信徒団の一員だった。私たちは、隣人同士が普通お互いを知っているのと同じくらいには、自分たち同士のことを知っていた。私たちは、アニーは可愛らしく気まぐれな子で、早くに結婚して、ロバートによってここに連れてこられ、可愛いもの好きで、主婦としてはいまいちで、怒りっぽいたちで、でもすぐに反省するということを知っていた。

 私たちは、レイシー・エイキンズは、太っていて、怠け者で役立たずで、やすやすと十年で十人の子どもを産み、鈍い女で愚かですらあり、彼女の家や彼女自身が泥で汚れていても、不潔な のを気にしていないことを知っていた。何よりもまず、シェーカーが彼女やヘンリー、そしてその子どもたちに対して行ったのは、小川に行って入浴させることだった。それでも、彼らが集会に清潔にして来ているかを確認するために、いつも誰かが気をつけていた。

 私たちは、ヴィニー・パークスは年寄りで、話好きで、毒舌で、しかし活発で、彼女とジョンがとても貧しくて、床の上に藁の布団を敷いて寝ていた時ですらも、清潔で誇りに満ちていたことを知っていた。ビリーバーズとなってから、少なくとも家畜の所有という意味では、彼らの社会的地位は上がった。彼らはそれまで一頭も所有していなかったのだから。そして、たまに不満を漏らす以上のことはしなかった。「少なくともあの頃は、私たちは自由で、自分たちのやりたいようにやっていた」

 私たちはみんな、アマンダ・スティールはしみひとつなく、家の中もすっかり清潔で、やつれていて表情に変化がなく、しかし愚痴もこぼさずよく働くことができ、ウィリアムと子どもたちのために、女性ができる最大限のことをやっていることを知っていた。彼女は、ウィリアムのお金に関しては欲深く、それをごく切り詰めてやりくりしていた。彼女は、自分たちの分け前を共同体に譲り渡すことを決してよく思っていなかった。彼女は、自分の作ったものが他の誰かに譲られるのを見るのが耐えられなかった。

 それからパルミラは、彼女がお人よしであるのと同様に美しく、それでいて自身の美しさに無自覚で、みんなに親切で、笑い上戸で、笑いに関しては少し下品で、しかし行き過ぎることはなかったとみんな知っていた。彼女の人を思いやる心は敏感で、寛大な心の持ち主だった。彼女は誰かに対して憎しみを抱くことは決してなかった。彼女はのんきで、優しくて、気前が良かった。

 次は、私自身のことだ。彼女たちが私の何を知っていて、どのように思っていたかはわからないが、私はパルミラから愛されていたことだけはたしかだった。彼女たちは、私は仕事が上手で、家をきれいに保っていたし、できる限りリチャードの世話をして、黒人にも取り計らって、私が運ぶようにと与えられた荷を運び、病人の世話をし、持ってきた少しの(2)本を読んでいたことを知っていただろう。だが、実際のところはわからない。私たちが自分自身について思っていることは、しばしば他人が自分たちをどう思っているかということとは違うものだ。

 ここでは、自分自身の富を蓄えることは許されず、他人のための仕事を行うことになっていた。私たちの職務は単純明快だった……喜びと潔白さを崇拝すること……快さと公平さを持って行動することだ。私は、私たちがどうすればうまくやれるのだろうかと思った。

 起床の鐘が鳴った。鐘の音は庭園を超えてカランカランと鳴り渡り、すべての家に響き渡っていた。それは、みんなを直ちに起床させた。「今何時?」薄暗い部屋の中をきょろきょろ見渡しながら、アニーが尋ねた。
「四時三十分よ」と私は言った。「あなたも覚えているでしょ、鐘は十月までは四時三十分に鳴ることになっていて、それから、冬には五時に鳴るようになるの」

 パルミラは伸びをして、髪をくしゃくしゃと撫でつけてから肩を回した。「一番にするように言われたのはなんだったっけ」
「お祈りよ」アマンダが短く言った。

 私たちはベッドから抜け出してひざまずいた。私たちは、自分が望むだけのあいだ、お祈りをすることができた。しかし、(3)着替えに許されている時間は十五分しかなかったので、それほど長い時間やっているわけにもいかなかった。

 私たちは次々に立ち上がって、ベッドの足元にあった椅子を並べ、枕を椅子の上に並べて、枕カバーを取って干した。ベッドを整えることは、私たちの義務ではなかった。私たちは、この重要な一日の始まりに遅れぬよう心配しながら、急いで着替えた。私たちはそれぞれ替えの下着を履いて、手に入れたばかりの清潔なドレスを着た。私たちが共同体に入る時に身につけていた服は、再び着る前に洗濯する必要があった。私たちは汚れたものを、私のベッドの上に雑然とまとめて置いた。その他の人々は、急いで互いに自分のやるべきことへ向かった。

 私自身のやるべきことは、部屋の中の汚れものを集めて、廊下を進みつつ他の寝室のものも集め、それらを洗濯場へ持っていくことだった。それから私は、男性の汚れた服を集めるために引き返さなくてはならなかったが、それらは、彼らのドアの外にまとめられ、小綺麗な束にして横たえられているのだった。

 ブラザー・ランキンの家は大きく、シェーカー・ファミリーの男女を離れた状態にしておくために改装されていた。もともとあった階段に加えて、もう一つ別の階段が広間の後ろに作られていて、男性はそこを使わなければならなかった。(4)食堂は広めに作られていて、二つのドアがついていた。左側が男性用で、右側が女性用だった。居間は一つもなかったが、それは必要ないからであった。もともとの居間は(5)紡績室に変えられていた。屋根裏部屋が、寝室の上に十分な高さで設けられ、広い部屋が私たちのファミリー・ミーティングのために作られていた。

 私がせっせと仕事をしているあいだ、家の中に男性は一人もいなかった。というのも、男性の仕事はどれもみな外にあったからだ。リチャードの姿が見えなかったけれども、私は彼を探さずにはいられなかった。私は、リチャードは野原のほうで何かの仕事の監督をしているに違いないと思った。朝食の時に、彼を見ることができるのはわかっていたが、(6)朝食を知らせる鐘が鳴るまで、まだあと一時間半もあった。これは私たちが仕事をしっかり終わらせるため、そして、食事の用意をするための時間を台所係の女性に与えるためだった。

 パルミラは搾乳場に出かけ、寝室を掃除する担当のアニーとヴィニーは仕事の最中で、掃いたり拭いたりして、寝室を整えていた。私たちは、決して何かを放っておくことがないように、と厳粛に忠告されていたので、掃除仕事はほとんどなかった。この小綺麗さや清潔さの強調は、マザー・アン・リーの言葉から直に受け継がれたものだった。「清潔で、勤勉であれ、そしてすべてのものにそれ相応の場所を与え、何物もその場所に留めなさい、それから衣服は上品で綺麗な状態を保ちなさい。あなたの家が綺麗で整頓されているか、そして食料は整理されているかに気を配りなさい。清潔で、綺麗に、そしてこれからのすべての行いに、神への畏怖の念を持ちなさい」

 私が衣服を洗濯場に運ぶので行ったり来たりしていた時、シスター・プリシラが台所で料理の監督をしているところに出くわした。レイシーは私たちの部屋からそこに移っており、私は内心ほくそ笑みながら、彼女はしばらくはほとんど役に立たないだろう、と思った。カッシーもそこにいて、小声でぶつぶつ言いながら、肉を切っていた。「ミス・ベッキー、何をしているのですか?」私が二度目に通りがかった時に、カッシーが聞いてきた。
「私が洗濯の当番なのよ」と私は彼女に言った。
「その洋服を私に渡してください」と彼女は言った。「ここに置いていってください。後にも先にもあなたが汚れた服を扱う必要はないです」
「カッシー」シスター・プリシラが呼びかけた。「シスター・レベッカは今月洗濯当番なのです。あなたのやるべきことはこちらの台所にあります」
「でも私は、ミス・ベッキーにお仕えしてからずっと彼女の服を洗ってきたんですよ」
「もう違うの、カッシー」私は両手いっぱいの汚れた衣服を引っ張り上げながら言った。
「リチャードがあなたに対して何と言ったか思い出しなさい」
「リチャードさんはたしかに、私は自由だと言いました」

 シスター・プリシラは部屋の中央にある大きなテーブルを回りこんで言った。
「ならば、そうなのですよ、カッシー。あなたはまったく自由の身で、もし望むなら、この村を去ることができます。でもここにいる以上、あなたはあなたに割り当てられた仕事をやらねばなりません。そしてもうシスター・レベッカに仕える必要はないのです」

 カッシーはシスター・プリシラを見つめ、彼女の大きな口を小さくすぼめた。下唇は固く突き出されていた。「私はミス・ベッキーのものです。私は彼女のもとを去るつもりなんて一切ありませんし、私はできる限り彼女を助けるつもりです。あなたにそんなことを言われる筋合いはありません」

 シスター・プリシラの口は固く結ばれた。私は慌てて衣類を床に置いた。
「カッシー」私はできる限り厳格に言った。「リチャードも私も、ここでは事情が違うと言ったでしょう。私はあらゆる日課をこなさなければならないし、あなたには私を手伝うことはできないの。あなたは、あなたに割り当てられた仕事はどんなものでもやらなければいけないの。今すぐに台所で働くべきよ。さあ、私が言っていることをよく聞いて、しっかりやりなさい、今言われた通りに。それからシスター・プリシラがおっしゃったこともよく聞くのよ、いい?」

 カッシーは、嘆願するような目で私を見た。私は首を振った。「はい、わかりました」彼女は最後に言って、嫌々降参した。彼女は私の言ったことを理解した。彼女は私から指示を受けるのに慣れていた。従うことには従うのだが、嫌々なのだった。

 私は、初日の朝に問題を起こしたことを後悔していた。そして、私はシスター・プリシラが彼女をうまく管理できるように願った。しかし彼女は東部の出身で、黒人の扱いの経験はまったくなかったのだった。カッシーに彼女の言うことを聞くように指示するのは嫌だった。私がシスター・プリシラの権威を無視しているように見えるのはわかってはいたが、カッシーが反抗するのも心配だった。それでもシスター・プリシラは、「このことは報告しなければならないでしょう」と言った。
「彼女もこれからは気をつけます」と私は言った。
「彼女は他の人のために家事をするのに慣れていないだけです」
「しかし、彼女への説明は済んでいます」

 私はシスター・プリシラを揺さぶってやりたかった。黒人には、一度説明するだけでは不十分なのだ。
何度も何度も説明し、何回も何回も言って聞かせ、やって見せ、忍耐強く向き合うのだ。
そして当然、シスター・プリシラが、黒人が所有者に対して抱いているある種の忠誠心を理解できるとは考えられなかった。「でしたら、私にも伝えてください」私はたぶん、はっきりと言いすぎてしまった。「カッシーは、ただずっと訓練されたことに従っているだけなのです」
「わかりました」シスター・プリシラは突然賛成した。「朝食後、直ちにあなたをシスター・スーザンに会わせます」

 シスター・スーザンは精神的指導者で、女性の犯した罪はすべて彼女に対して告白することになっていた。ドアの外に出ながら、私は何を懺悔すればいいのだろうかと疑問に思った。私がカッシーをきちんと教育しなかったこと? 私が新しい暮らし方を説明しなかったことだろうか? シスター・スーザンもまた東部の出身だった。一体どうして、彼女がカッシーの心の機微を、シスター・プリシラ以上に理解できようか。私はありのままに起こったことを簡潔に伝え、なんとかして、カッシーを生意気で反抗的であったという追及から守らなければならないと決心した。

 朝食を知らせる鐘が鳴る頃までには、私たちは衣服をより分け、 桶の中の水は白い衣服を浸すのに十分な温度になっていた。私たちは朝食を食べにいくためにそれらを中断して、教えられた通りに、右側の扉を通って部屋の中へと入った。

 特別なテーブルが設えてあった……長い、架台式テーブルだった。男性は男性の側で食べ、女性は女性の側で食べ、会話は一切許されていなかった。私たちは部屋に入ると、椅子のそばでひざまずいてお祈りすることになっていた。それから食事が食卓に並べられるのだった。テーブルは、四つの集団のそれぞれの前に食事が出されるよう配置されていた。ボウルを回す必要もなければ、手の届かないところにあるものを取ってくれるよう頼む必要もなかった。

 最初の日の朝は、リチャードのことで頭がいっぱいだったので、私はお祈りをすることができなかった。私はリチャードが、部屋の中にぞろぞろ入っていく男性たちの中にいるのを見つけて、彼のことで頭がいっぱいになった。私は彼のことを頭の中から追い出せず、お祈りに集中することができなかったので、彼が守護され、安全でありますようにと願うことしかできなかった。

 目を閉じていても、彼の茶色くて、濃くて、首のところでカールした髪のことが眼前に思い出されて、その手触りの記憶は心をかき乱すほどだった。四年近くも彼にまったく触れていなかったのに、どうしてこんなにはっきりと強く思い出すことができるのだろう? それから彼の、羽織っているジャケットの下の大きくて、首からどっしりと角張った肩……一体どうやったら、その手に触れた時の滑らかさ、私を強く抱いてくれる力強さを思い出すことができるだろう。彼は後ろを向いていたので、顔を見ることはできなかったけれど、彼のことを頭から引き離そうとしているうちに、よみがえってきた姿やかたちが私の前に立ち上がり、私の唇は脅されたように小刻みに震えた。

 私はひざまずいた姿勢から立ち上がり、彼のことを振り返るのはよそうと決心したのだが、私の目はすぐに彼を探し出そうとあちこちさまよっていた。彼は私のほうを見上げ、目と目が合うと微笑んだ。私は自分のほうに素早く椅子を手繰り寄せた。私には椅子の支えが必要だった。というのも、私の膝は突然弱くなってしまったからで、とてつもない悲しみが私を満たした。ああリチャード、リチャード、私の心は泣いている……どうしてこんなことが私たちのために正しいというの。どうしたって私たちは二度と触れ合ったり話したりすることができないのでしょう? シェーカーの掟によれば、男女が話をする時は、例外なく第三者がいなければならないのだった。リチャードは決してそれを破らないだろうと、私にはわかっていた。

 私はすでに、今の状況については考えられる限りの苦しみを味わったと思っていた。けれど、あまりにも深い喪失感や、凄まじい絶望感が私を打ちのめし、吐き気がするような悲嘆の波が私の中に湧き上がってくるのを感じた。おいしそうな食事の香りも、気分を悪くさせるだけだった。来る日も来る日も来る日も、こういうふうになるのだろう。それから私は祈った。私はリチャードの見えるところにいたい。私はリチャードを見続ける強さが持てますようにと祈った。私は、苦痛と切望が終わってくれますようにと祈った。そして、私から体の痛みを取り除いてくれるであろう信仰の喜びが与えられますようにと祈った。

 規則では、私たちは何も残してはならないことになっていたので、私は最小限のおかわりしかしなかった。私は少量しか食べられないとわかっていた。食事は藁のように感じられた。

 パルミラは私を肘で軽くつついた。「トーマスを見て」彼女は口を動かさないように囁いた。「彼はすっかり汗をかいている。どうやら期待していたよりも多く働くことになったみたいね」

 シスター・プリシラは机を素早く叩くと、眼鏡越しにパルミラのことを注意深く見た。パルミラは深いため息をついて、そして吐息の中に私はかすかに「あの、うるさがりや」 という言葉を聞き取った。

 食事が終わると、私たちは再び静粛なお祈りのためにひざまずいて、それから自分たちの仕事に戻るためにゆっくりと繰り出した。シスター・プリシラは、玄関のところでパルミラに追いついた。「シスター・パルミラ、搾乳場に戻る前に、シスター・スーザンに会いにいきなさい。彼女がシスター・レベッカの告白を聞き終えるまで、ドアの外で待っていなさい」
「どうして、私がシスター・スーザンと会う必要があるのですか?」パルミラは尋ねた。彼女は潔白さを示すように目を見開いていた。
「あなたは食堂でしゃべっていました」
「私がしゃべっていたなんて、どうしてわかるのですか?」
「あなたの唇が動いているのを見ましたもの」
「私は祈っていたのです」

 しばらく、シスター・プリシラは不意打ちを食らっていた。彼女の口は無意識に開き、眼鏡は鼻の下までずり落ちた。パルミラが何と言ったのか、彼女には到底聞こえていたはずがなかったので、パルミラに異議を唱えることは決してなかった。私に向かって「彼女はお祈りをしていたのですか」と尋ねることしかできなかった。

 何のためらいもなく私は、「彼女はお祈りしていたかもしれません。彼女が何と言っているのかは聞こえませんでした」と言った。

 シェーカー共同体の初めからの欠点は、規則が多すぎること、厳格すぎることであった。
そのせいで、私たちは権威に反抗してお互いをかばいあうことになった。お互いに対する忠誠と、長老たちに対する忠誠とのあいだに挟まれた場合には、必然的に、私たちはお互いのほうを選択した。私たちは当然のように、ちょうど、子どもが悪事を見つかって処罰に直面した時にやるのと同じように、嘘をついた。シスター・プリシラには何もできなかった。彼女はメガネを直して「ふん」と訝しげに言い、仕事に行ってよいとパルミラに言った。

 私はシスター・スーザンの部屋へと向かった。彼女は他の四人の女性たちと部屋を共有していた。他の人たちは各自の仕事に向かっていたので、彼女は一人だった。彼女は小柄で、ひ弱で、集会では非常な光悦に耽り、個人的にもたくさんのお祈りに耽っている人だった。彼女は並外れて善人的な顔立ちだったが、これは彼女がシェーカーで生まれ、他の生活をまったく知らないためであった。夫や子どもと別れる悲しみを、彼女は知らなかった。彼女はシェーカーのあらゆる信条に精通しており、私たちに向かって、最も頻繁にマザー・アンの言葉を引用する人だった。彼女は今では中年を過ぎていて、ほぼ白髪だった。「入りなさい」私がノックすると、彼女は言った。
「シスター・プリシラに、今朝食堂で起こったことを報告するようにと言われました」私は彼女に言った。
「ええ」彼女は答えた。「彼女から聞いています」

 私は何があったのかをできる限り簡潔に報告し、その責任を全部引き受けて、カッシーを大目に見てもらえるよう頼んだ。シスター・スーザンに面倒くさがっているような様子はなく、私が話し終えると、彼女は私に向かって微笑みかけた。「こういうことは」彼女は思いやりを持って言った。「時間が解決してくれます。あなたが、カッシーが私たちのやり方を理解できるように助けることで努力するのが不十分だった部分はあるかもしれないけれど、他の罪まで着せられるはずはないでしょう。あなたはうぬぼれや高慢な自尊心を持ち合わせていないのですね」

 それから私は、良心の呵責から、より重大な問題、シスター・プリシラに対して自分の我慢が足りていなかったこともすっかり告白してしまった。シスター・スーザンは私に、忍耐の魂のために、忠実な服従のために、精神の戒めのために、その場で直ちに祈るように言った。私は、そういったもののために心からすすんで祈った。それらが身についた時のみ、私は心の安らぎを求めることができるのだ。私にはそれらを身につける必要があると感じた。

 卓越したまじめさで、シスター・スーザンもまた祈った……そしてそれから彼女は私にもう下がってよいと言った。私は彼女が集会での(7)公衆告白(public confession)を要求しなかったことに安堵した。

 午前中の残りの時間は素早く過ぎた。十二時になる十分前に、(8)昼食の鐘が鳴った。
その後で私は仕事に戻り、夕食は六時であった。しかし、私たちは夕時もまた自由ではなかった。何かしらの礼拝集会や儀式が、毎日催された。最初の夜は、例えば、ダンスの練習のために集まることになっていた。夕食と集会のあいだには短い休憩時間があり、その時間で私たちは部屋に行ったり、休んだり、みんなで話をしたり、身の回りの整理をしたりした。

 パルミラは自分のベッドに倒れこんだ。「すり減って小さくなってしまいそうなくらい疲れたわ」彼女は肘を高く持ち上げながら言った。「誰かあの搾乳場で働くのがたやすいことだと思う人は、自分の番が回ってくるまで待ってみなさい。桶や大桶を持ち上げなきゃいけないし、しゃがんだり前かがみになったりすることの繰り返し。それを丸一日なんて辛すぎる」

 私も疲れていた。ファミリーには約三十人の人がいるので、それほどたくさんの人数分の洗濯というのは、それなりに大規模だった。私は一日のほとんどを桶に向かって前屈していた。私の背中は疼いて、手は水を吸って膨れ上がっているように感じた。アマンダは紡績業務にあたっていたので、彼女は私たちみんなの中で一番元気が残っていた。アニーとヴィニーは、寝室掃除のあとで、秋の庭の草むしりをしていた。アニーは背中が壊れたと不満を言い、ヴィニーはとても疲れていて、彼女の哀れで年老いた顔は青白かった。「私にはダンスをする元気なんてもう残っていないわよ」と彼女は言った。

 私たちのうち、誰もそんな元気が残っているとは思えなかったが、初日であっても、病気ぐらいしか集会や他の義務から免れられる理由はないのだった。

 七時三十分になって、私たちは集会所に向かった。四つの壁にぐるりと備え付けられたベンチを除いて、そこには何もなかった。その床面積は、礼拝 (the exercises)に必要な広さがあった。私たちを指導するために、ブラザー・ベンジャミンがチャーチ・ファミリーからやってきた。彼は私たち全員が着席するまで待ってから、今まで自分たちの家ではダンスの隊列を適切に覚えるために必要な広さの場所がなく、窮屈だったから、私たちはみんなぎこちなく、堅苦しいということを説明した。彼は、訓練をやり遂げるために、もっと素早く自由自在に、もっと楽しそうに、他人の目を気にせず動かねばならないと言った。彼の指導方法は、六人のシスターと六人の修道士をみんなの前に立たせて、私たちに見えるようにダンスを通しで指導する、というものだった。

 初めのうちは、シェーカーの曲は私にとって不可解なものだった。いくらか歌詞があったが、大部分はそうではなかった……旋律だけのようで、私は古い教会の賛美歌に慣れ親しんでいたため、主旋律の多くが私にとっては風変わりなものだった。シェーカーの曲は、ほとんど主旋律がないままに、進んだり戻ったりしており、しばしばリズムがちょうど真ん中のところで乱れ、ゆっくりから早くなって、それからまたゆっくりに戻った。その夜、私たちはみんな疲れていて落胆していたと思うが、ブラザー・ベンジャミンはダンスの曲に「マザー・アンズ・ロウリー」を使った。それは「ロウリー、ロウリー、ロウリー、ロウ」が繰り返される部分を除いて、歌詞がなかった。

 見ている私たちはうたい、選ばれた人たちは足遣いを繰り返して覚えた。それはゆっくりした足運びの、シャッフル・ステップだった。誰にでもできるものだった。しかし見ていてとても驚いたのは、修道士ベンジャミンが教えた隊列だった。軍事訓練中の兵士のように踊り手は動き、初めは結束した列をなしていて、男性と女性が向かい合うと、通り過ぎて、バラバラになってからまた通り過ぎ、この段階では二人組か三人組で、次の段階ではみんな一緒になって、輪になって回りながら、混ざり合った。私は、こんな踊りは絶対覚えられないのではないかと訝った。

 最終的には覚えることはできたのだが、最初の夜には無理だったのだ。私たちはロウリー・ロウをうたい、踊り手は練習した。するとブラザー・ベンジャミンは彼らを座席へと送り出し、見ていた私たちを呼び出した。私は、人前で演じる時は、人前に立つ恥ずかしさを押さえつけねばならなかったのだが、その隊列を正しくやることにとても集中していたので、自分自身のことなどすっかり忘れてしまっていた。そして私は私自身がセッションを中断させる原因になりたくなかった。

 彼らは、マザー・アンの頃はダンスの隊列は決められていなかったことを教えてくれた。それぞれが、欲求のままにすごい速さで旋回したり回転したりして、自由で生き生きとしていたそうだ。しかし、マザー・ルーシーライトが今は教会のリーダーで、彼女は、適切な足運びや隊列に沿うことをとても重んじた。彼女は、ダンスを適切に身につけるのを手伝うために、村に宣教師を送り込むことさえやった。しかし修道士ベンジャミンは、決して教わる必要がなかった。彼はすべての足運びと隊列を心得ており、それから彼自身が忍耐強く、念入りで、用心深い良き先生であった。

 ブラザー・ベンジャミンに指導を受けた時、彼は私たちを席に着かせ、それから教典を読んで聞かせた。すると彼は突然歌をうたい出し、激しく身体を振動させるダンスにみんなを誘った。シェーキングもまた、適切に行われなければならなかった。手首に力を抜いて手をぶらぶらさせることから始まる。振動は前腕に移り、そこから肩へと伝導し、ついには体全体を巡り最高潮に達するのだ。

 指導の最中に、シスター・スーザンが歌の賜物を授かった。どんな賜物もすぐに享受するのがシェーカーのやり方なので、歌のあいだ、私たちはダンスを中断して彼女のまわりを囲んだ。彼女の顔は、授かった歌と喜びで輝いていた。ブラザー・ベンジャミンは、すぐにその歌が素晴らしいものだと悟り、ノートをさっと取り出してそれを書き留めた。
みんなその歌を気に入り、私は歌詞をよく覚えている。

“O calvini criste I no vole,
Calvini criste liste urn,
I no vole vinin ne viste,
I no vole viste vum”

 そのヴィジョンが彼女のもとを去ると、彼女は青ざめて弱々しくなった。しかし彼女は、彼女が何を見たのかを話そうとした。「私にはマザー・アンとキリストが、並んで微笑んでいて、こちらに来るように手招きしながら、満足そうにしているのが見えました。ああ、これは栄光と喜びの幻想だった!」

 私たちは彼女の歌を、栄光と喜びの歌と呼ぶようになり、そのリズムが軽快だったので、私たちはよくそれを生き生きしたダンスに使った。

 その後、私たちは祈りと賛歌から解放されて、つま先歩きで部屋へと向かった。私たちは常に静かに歩かなければならなかった……これは規則だった。静かに歩き、静かにドアを閉め、静かに話をした。私はパルミラが足を持ち上げ、一度大きな音を立ててそれを踏みつけようとしたのを見た。しかし彼女は決してしなかった。

 私たちがきちんと列になって、集会所から立ち去っている時、私は私の前を歩いているアニー・ジュエットが、彼女の近くにいたロバートに優しくさっと触れ、彼女の手が彼の手に触れるのを見た。すると彼の手は、まるで燃えている石炭に触れたかのように素早く動き、引っ込められた。私は彼女を咎めるつもりはなかったが、私にはそんなふうにリチャードに触る勇気はなかった。しかし、私にはどうして彼女がそんなことをしたかが理解できた。私たちはこうした規則違反を報告することになっていた。私は報告するくらいなら舌を切り落としてしまうほうがましだと思った。彼らの監視のもとで何が起きているのか気づかないのは、彼らの問題なのだ!

 就寝時刻は10月までは九時半で、それからは九時に変わるのだった。その日の夜は、私たちのほとんどがあまりにも疲れていて、蝋燭の明かりが消されたあとは何も話すことができなかった。私たちはそっと横になり、すぐに眠りに落ちた。私たちのシェーカーでの最初の一日が終わった。私たちはその生活の様式と周期を覚え始めた。今では、何を期待すべきか少しはわかった。

 ベッドの中で、私たちはみんな静かだった。アニー・ジュエットも、その夜はすすり泣くことはなかった。

第10章訳註

(1)起床の鐘 (rising bell)
19世紀におけるシェーカー教徒の基本的な生活リズムは、19世紀前半の夏期では4時30分起床、冬期は5時起床となっており、これが19世紀後半に移るとそれぞれ30分ずつ遅らされた。シェーカーコミュニティにおける生活では鐘の音は規則的で集団的な生活を維持する上での重要な役割を果たしており、起床の鐘の他に起床の鐘の後一時間後に鳴る朝食の鐘、また昼食の30分前である11時30分に鳴る昼食を知らせる鐘などがあった。

(2)本を読んでいた(reading)
シェーカーコミュニティでは夕食後ユニオンミーテイング(“union” meeting)の開催が習慣化していたが、ユニオンミーテイングがない場合、個々人は読書や物書き、あるいは勉強を、通常9時から10時の間である就寝時刻まで行うことができた。

(3)それから私は、男性の汚れた服を集めるために引き返さなくてはならなかったが、それらは彼らのドアの外にまとめられ、小綺麗な束にして横たえられているのだった。
シェーカーコミュニティでは男女の職業上の分離が外の世界と同様に行われていた。ここで主に女性が担当していた業種には料理や掃除、ガーデニング、糸紡ぎ、裁縫、販売用の商品の梱包といった共同体内の運営に関わるものが挙げられる。

(4)朝食を知らせる鐘(bell)
訳注(1)を参照。

(5)食事 (meal)
食事はシェーカーの流儀にしたがって支給された。シェーカーコミュニティの食堂では4つの机が配置されている。この形式はコミューン内では特に「フォースクエア(foursquare)」といって、4つの机がセッティングされており、それぞれに食事と飲み物と調味料が用意された。

(6)清潔で、勤勉であれ、そしてすべてのものにそれ相応の場所を与え、何物もその場所に留めなさい、それから衣服は上品で綺麗な状態を保ちなさい。あなたの家が綺麗で整頓されているか、そして食料は整理されているかに気を配りなさい。清潔で、綺麗に、そしてこれからのすべての行いに、神への畏怖の念を持ちなさい。(Be neat and industrious; have a place for everything and keep it there; keep your clothing clean and decent; see that your house is kept clean and orderly and your victuals are prepared in good order. Be neat and clean and keep the fear of God in all your goings forth.”)
F. W. Evans “SHAKERS CONPENDIUM (forth edition)” (AMS Press, 1867) p.147からの引用文。
“To a sister she said: “Be faithful to keep the Gospel; be neat and industrious; keep your family’s clothes clean and decent. See that your house is kept clean, and your victuals prepared in good order ; that when the brethren come home from their hard work, they may bless you, and eattheir food with thankfulness, without murmuring, and be able to worship God in the beauty of holi-ness. Watch, and be careful; don’t speak harsh-ly, nor cast reflections upon them. Let your words be few, and seasoned with grace.”

(7)公衆告白(public confession)
シェーカーコミュニティでは、罪を犯した場合いかなる時でも犯した罪を長老に対して打ち明けることが必要とされた。これは、シェーカー教に入信する場合に個人が行わなければならないことの一つとされている。

(8)昼食の鐘(bell)
訳注(1)を参照。

10章訳註の出典  研究成果ページへ