当時、学校にはあらゆる年齢、体格の子どもたちが百人以上いた。私たちのファミリーの子どもたちもいたが、何人かは近隣の集落から連れてこられて、私たちと共に学んでいた。ちゃんとした家がない孤児たちも共に学んだ。

 スクール・ハウスは私たちがシェーカー・ヴィレッジに配属される前に建設された快適な白いフレームハウスだった。当然、男の子と女の子は一緒には授業を受けなかった。ブラザー・ステファンは男の子全員を教育する仕事をしていた。女の子のほうが多く、私以外にも女性の教師がいた。彼女はセンター・ハウスから来たシスター・ドルシーといい、子どものいない、ふくよかで母性あふれる未亡人だった。彼女はオハイオ州のユニオン・ヴィレッジからこのヴィレッジに送られてきた。その朝早く、私がスクール・ハウスに入った際、私を迎えてくれたのは彼女だった。「ブラザー・ステファンはもうすぐ来るでしょう」と彼女は言った。「あなたの職務について話し合うつもりです」

 一階と二階それぞれ二部屋ずつを彼女は私に案内してくれた。ホール左側にある二階の部屋でシスター・ドルシーが言った。「ここがあなたの部屋です」

 広々として明るい部屋だった。そこには勉強用の長椅子が奥に向かって置かれ、一部数脚の椅子は前方に置かれていた。私はそれらが分かれていることを不思議に思ったが、何も言わなかった。いずれ説明されるだろうと思ったからだ。シェーカーのインテリアで最もよく使われていた色は青と白だった。すべての教室は白色に塗られていた。しかし羽目板とドアと窓枠は彼らが好んだ美しい明るい青色だった。壁のまわりにはペグが設けられ、物を所定の位置にきちんと整えておくよう、子どもたちにも教えられていた。そこには私のための椅子と机があった。そこが私の教室だった。

 私たちは下の階でドアがそっと閉められるのを聞いた。「ブラザー・ステファンですね」シスター・ドルシーは言った。「下に行きましょう。もうすぐ子どもたちが来ます」

私はミーティングでステファン・バークをよく見かけた。彼は冬のあいだは教鞭を執っていたが、そうでないときは手仕事に勤めていた。しかし、彼はスクール・ファミリーと共に住んでいたので、挨拶を除いて彼に話しかけたことはなかった。今になって少しの不安を感じていた。彼が私を見定めようとしているのだと思い、少し弱気になったのだ。

 彼は背が高く細身で、紳士的で親切だと以前私は思ったが、それ以上は詮索しなかった。そして今、私はこの部屋に一緒にいて、彼の話を聞いていると、彼の目は深い茶色で澄んでいることに気がついた。彼の髪は豊かで、子どものようなブロンドであり、広めの額からうねった髪は耳にかかっていた。テーブルから一冊の本を手にとった彼のその手は先細く、本のカバーをなでている彼の仕草から、おそらく彼は物事や手に触れているものへの感性が繊細である、と私は思った。彼は私を温かく歓迎してくれた。「私たちはあなたをとても必要としています、シスター」

 躊躇して、私は勉強してからどの程度経っているのか説明した。しかし、「大切なことはあなたが学んだということです。すぐ思い出すでしょう。あなたは修辞学、読書、筆記、数学の基礎を教わったのでしょう?」と彼は受け流した。
「はい。私はそれに加えてラテン語、地理、歴史をイギリス人のフォスター氏から習いました」

 彼は自分の椅子から体を乗り出した。「自然主義者のフォスター氏ですか?」
「はい。彼は二年以上私たちの家で、鳥と動物について学んでいました」
「なんと名誉なことでしょう!」と言って彼は笑った。「私はあなたが教えることについて、まったく心配していません」

 そして彼は一冊ずつテーブルの本を拾いあげた。「これらは教科書です。それと、私たちは(1)ランカスター法を導入し始めました。私たちには指導しなければいけない子どもが多くいますが、指導者が十分にいません。ランカスター法は最も現代的な方法であり、最も優れた方法だと思われます」

 私はそれについて聞いたこともなく恥ずかしいと、伝えた。

「あなたはクラス内がどのように分けられているのか気づきましたか? 教室の奥に長椅子がまとまって置かれていて、あなたのテーブルの近くにも数脚ありますよね」と彼は尋ねた。

 私はうなずいた。

「実際にあなたが教えるのは、選ばれた年長の女の子たちによる小さなグループ、つまり最も優秀なグループだけです。彼女たちがモニター(monitor)として、他の生徒たちを指導します。私たちはこの方法以外運営の仕方がないのですが、実際私はこの方法に賛同しました。今までに使用された教育法の中で最も良いと信じています」そして彼は机に肘をつき、前のめりになって続けた。「さて、この教育法について話しましょう。今朝、子どもたちが集まる時、ほとんどの子どもは後ろのほうに座るでしょう。彼らは半分のモニターたちの監督のもと、声を掛け合い、学習をします。あなたは残りの半分を指導するのです。午後にはその子たちが指導役になり、あなたは午前中に指導役だった子たちを教えます」これは単純明快だった。私はうなずいて理解を示した。「教える科目はなんでしょうか」

「それについてですが、まず午前と午後で生徒が入れ替わります。複雑なようですが、実際は単純です。とても合理的なことです。シスター・ドルシーは裁縫・紡績・編み物の実践的な技術に加え、音楽を教えます。そしてあなたは、座学を担当するのです。生徒たちは、交代であなたたちの教育を受けるのです」彼は背板にもたれかかり、満足そうに微笑んだ。

 彼は本の山に手を置いた。「これらは修辞学、算術、地理、歴史の本です」彼は苦笑いをした。「ここには読書用の本がないのです。なので私の本を何冊か持ってきました。そこから選ぶといいでしょう」彼は切に言った。「あなたがシェイクスピアや(2)スペンサー、(3)ジョン・ダンを読んでいるといいのですが……」

 私は笑った。「はい、シェイクスピアと、スペンサーの『妖精の女王』を。フォスター氏はシェイクスピアやスペンサーの本と、(4)ベーコンのエッセイ、そして聖書を持ってきていました」
「それ以上の傑作はありません」ブラザー・ステファンは机の上で手を合わせながら声を張って言った。「世界中どこを探してもそれ以上の名作はないでしょう。生徒たちに読んであげれば、ずっと文学に夢中になるでしょう」

 私はブラザー・ステファンがたった一人で教えている、少年たちの手仕事の訓練が気になった。「男の子たちは牧場で十分な訓練を受けています」と彼は言った。「私が教えるよりも実際に自分たちで経験したほうが、はるかに良い訓練になります。彼らは乳搾り、餌やり、家畜の管理を手伝っています。そして年長の男の子たちは、春は学校に行かずに、耕作や植え付けに専念することになります。あなたも知っているでしょう、シェーカーには手仕事ですよ。シェーカーは実践して覚える人たちです」

 彼は立ち上がった。彼は俊敏に動く人だった。「子どもたちが従順で、素直で、自発的であるとあなたもすぐにわかるでしょう。愛こそすべてです、シスター・レベッカ。愛されて育った子どもたちは愛情のある人になるのです。しかしもし問題があったら、必ず私に話してください」

 私は本を抱えた。シスター・ドルシーがそれを私が抱えた腕の中に積み重ねてくれた。「本から解放されて嬉しいわ。本の内容を教えることは私には合わないので」と彼女は笑いながら言った。

 ブラザー・ステファンも共に笑った。「しかしあなたは実践を教えるのは得意でしょう、ドルシー」

 他のファミリーにおける男女のあいだよりも、ここが自由であることは明白だった。教育の本質においては明確な性差がないため、このような自由が必要であるのだ。二人は同等で、どちらも同じく協力と気遣いを必要としていた。私はうたいたいくらい幸せだった。

 自分のテーブルに本を並べ、それらに愛情をこめて触れた。私は本の手触りを指先に覚え、知識やこれからの生活への期待を感じた。そしてフォスター氏のもとで学んだ時の熱意が戻ってきた。

 私は修辞学の教科書を手に取り、無作為に開いた。そのページで目に止まった最初の言葉は、フォスター氏の声で何度も聞いたものだった。「修辞学とは、人の判断や感情に影響を与えるためのすべての散文の構成や演説に関する規則を定義するものである。そして、それゆえに表現方法の美しさや説得力に関わるすべての事柄を扱うのである」。まるで私が12歳に再び戻ったようで、フォスター氏のひざに座りながら、この本が彼の手元にあり、彼の目がそのページに注がれているようだった。「修辞学は次の分類に分けられる:修辞法、文法、論理、韻律、駆け引き、文学である」そして別のページでは「形容詞が修飾する名詞がない場合、または動詞に目的語がない場合は、形容詞または他動詞が独立する。例文:幸運は勇者に味方する」と書かれていた。私は本をパラパラとめくった。そこにあったすべてが思い出された。私は修辞学の教科書を脇に置いた。

 次に、革で装丁されており、使い古されて黒ずんだ薄い本を手に取った。角はすり減り、背表紙はボロボロになり始めていた。今までにたくさん読まれ、それゆえにとても愛された本なのだろう。それはジョン・ダンによる詩集だった。その本はあるページだけ何度も開かれた形跡があり、そのページはめくられてボロボロになっていた。ブラザー・ステファンはそれら二つの詩のどちらかあるいは両方を愛しているのだと私は思った。私は最初に目についたページを読んだ。

(5)『もしも、毒のある鉱泉や、そしてあの木、
その果実を食べたため、不滅であった我々が死ぬようになった木や、
また、淫らしげな山羊、嫉妬深き蛇でさえ、
呪われなかったのであれば、どうしてこの私が地獄に堕ちるのだろうか。
私の中で生まれた欲望や、理性は、
他の点においては差のない私において、何故、他よりも罪を醜くするのか。
その上、恵みは容易であって、神の栄光をいや増すものであるのに、
何故、神は恐ろしい怒りで脅かされるのか?』

 私が読んだのはその部分だけだったが、シェーカー教徒であるブラザー・ステファンがそのような詩を愛していることを不思議に思った。また、この詩は私の気持ちを表す言葉でもあることに気づいた。「嫉妬深き蛇でさえ、呪われなかったのであれば、どうしてこの私が地獄に堕ちるのだろうか」。私も同意だ。私はこれが疑問だと思っていたし、答えを求めていた。

 急いで私は本を閉じた。私は、もうこれ以上読みたくなかった。しかし、いずれすべてを読むことはわかっていた。理性的で、真実をうたった詩人なのだから。私は本を脇に置いた。私はブラザー・ステファンが本当にこの詩集を教えるつもりなのかと疑った。これは彼の個人的な本で、他の教科書に混じってしまったに違いない。

 子どもたちが集まるのが聞こえ、私はシスター・ドルシーに呼ばれた。「学校は歌唱から始めるのです、シスター・レベッカ。こちらに来て一緒にうたいませんか?」立派なシェーカー教徒のように、小さな男の子たちと女の子たちはそれぞれ部屋の両脇に分けられた。

 彼らは大人しく従順に、手を組み合わせ頭を下げてブラザー・ステファンの祈りを聞いた。そしてシスター・ドルシーが始まりの歌の調を定めるまで、礼儀正しく座っていた。それから、シェーカーの賛美歌をうたい始めた。

 幼い子どもたちの声は高く、可愛らしかった。また少し不安定で、ときどき音が外れていた。年長の女の子たちの声は明瞭で声量があり、年長の男の子たちの声は深く、幼い子どもたちの声と混じり合っていた。パルミラの子どもたちはその中にいて、清潔で、きちんとしていた。おいしい食事を食べてふっくらとしていて、エネルギーにあふれていた。アマンダ・スティールの子どももいたが、アマンダのように細く尖った顔をしていた。レイシーの幼い子どもたちもいた。彫りが浅い顔や、感情が読めない目からは、清潔さの欠片も感じられなかった。

 私の知らない子どもたちもたくさんいた。実際に彼らの多くはユニオン・ミーティングで見たことがあるだけだった。年長で大人っぽい一人の少女が、前方に座っていた。明らかに彼女のそばにいる若い子どもたちを監視するモニターだった。私は彼女を見たことがなく、誰なのか不思議に思った。彼女はウズラのように丸っこく、背が低いが、面倒を見る子どもたちよりも少し大人びていた。白い帽子の下から見える髪は茶色で、ブラッシングによって光沢があり艶やかで、柔らかそうでまるでシルクのようだった。彼女の頬は桃色を帯びており、口は小さく、若くて健康的だった。彼女は私のほうをちらっと見た。とても大きな目、豊かなまつ毛、それに沿ったアーチ状の眉を持ち、リチャードのような深い蒼色の眼をしていた。とても可愛い女の子だった。

 ブラザー・ステファンは私に立つようにいい、子どもたちに私が新しい教師であることを伝えた。そして私が女の子たちのすべての座学を担当し、その一方でシスター・ドルシーがこれから手工芸の実技を担当することを話した。彼らは子どもらしく、物珍しそうに熱心に私を見つめた。私は彼らの前で照れくささを感じ、落ち着いてじっとしているのが難しかった。しかし耐えることができた。そして私たちは教室に行くように言われた。

 子どもたちが外に出ると、シスター・ドルシーはその可愛い女の子を呼び止めた。「シスター・レベッカ、こちらはサブリナ・アーノルドで、最近サウス・ユニオンから彼女の父と共にやってきました。彼女は最も優秀な生徒の一人です。あなたは彼女にとても頼るようになるでしょう」と彼女は言った。

 女の子は顔を赤らめ、小さく膝を曲げてお辞儀をした。私は彼女へ微笑みかけ、あなたと出会えて嬉しく、頼りにしていると言った。彼女は可愛らしい笑顔を私に見せ、階段をかけ上がった。

 シスター・ドルシーが教科書のどの程度まで進めていたかを把握しているあいだに午前が過ぎた。私は臆病さ、不安さ、不確かさを感じるだろうと思っていた。しかし今は、私は自分も楽しむことによって元気づけられ、恐れも不安もなかった。まるでフォスター氏の声と手によって再び導かれるように、私の知識から、そして私自身から、生徒たちと共にこの喜びと楽しみを分かち合うことを熱望していることを確信した。

 私がブラザー・ステファンが教室の扉のそばに立っているのを見かけた際、私はシェイクスピアの(6)ソネット集の九十四番を声に出して読んでいた。詩はこう始まった。「傷付ける 力ありしが しない人……」

 私が一瞬声を詰まらせると、彼はそこから残りの文章を最後まで暗唱した。

(7)「夏の花、 夏に甘き香 香らせて、
ただ一人生き、 一人で絶える。
たがこれが 嫌な病気に 罹るなら、
雑草もその 威厳負かさん。
甘美なる もの、行いで 不快とならん。
腐れ百合、 雑草よりも 嫌な匂いす」

 彼が詩を唱えている時に、生徒たちの目線は彼に集まり、そして視線が私に戻ってきた時には少し目を見開いていた。彼が暗唱し終えた時、彼は笑い小さく手を振って素早く去っていった。

 彼がどのくらいの時間、私の朗読か私の詩に対する解釈を聞いていたのかわからなかったが、私は本を閉じた。生徒たちは溜息をついた。そしてセス・アーノルドの娘のサブリナは言った。「私は詩だけを勉強したいと思っています、シスター。あなたの詩の朗読はとても素敵です」

 私は彼女の可愛らしく上目遣いの顔を見て言った。「詩は、あなたにとって喜びと啓発になります。しかし楽しいことばかりではだめです。あなたは他の科目も勉強しなければいけません」

 あとになって、私はイースト・ハウスでは夕食をとらないことになっているとわかった。シスター・ドルシーは私に言った。「スクール・ハウスに食事が用意されているのだから、食事のためだけにイースト・ハウスに行くのは無駄です。私たちと一緒に食べましょう」

 それは私にとっても都合がよかった。

 午後、私は異なるグループの女の子たちに対して、午前中と同じ授業を行った。しかし私はなぜか彼女らとシェイクスピアのソネット集を読む意欲を失ってしまった。私はサブリナの可愛い顔を恋しく思った。午後の女の子たちは、午前中にサブリナの熱いまなざしを受けたあとでは、とてもさえなく見えた。そして、奇妙なことに、夏の花のソネットは私を不快な気分にさせた。

 やっと授業が終わったとき、私はいまだにその日の成果に鼓舞されていた。ブラザー・マクネマーが去る前にもう一度ユニオン・ミーティングがあった。それは私にとって長く疲れるものだった。私は礼拝運動やダンスには何の楽しみも見いだせず、私の心はその日の仕事で、私の思考は翌日のことでいっぱいだった。しかしその没頭は嬉しいものだった。

 夜になって、プリシーに部屋の様子がわからないように、やっと部屋のろうそくの火が消された。するとアマンダとパルミラがやってきて私のベッドに座り、声を潜めて学校のことや彼女らの子どもについて尋ねた。子どもたちのことを聞かずにまっすぐベッドへ向かうなんて、まったくレイシーらしいと私たちは思った。アニーは私たちが話しているあいだ、布団の中で静かに眠っていた。ヴィニーは体が痛むとうめき、きっと朝は体が動かなくなっているだろうと私たちに訴えた。しかし彼女は十分機敏に彼女の簡易ベッドに入りこんだ。「静かにして、プリシーが来る前に」彼女は私たちに警告した。「彼女は私たち全員をひざまずかせるわ。もしできたとしても、私は朝までひざまずいているなんて嫌よ!」
「静かにする」私たちは約束した。
「私の子どもはちゃんとマナーに気をつけている?」アマンダは尋ねた。
「ちゃんとしているわ」私は彼女に言った。「彼は自分なりに考えて行動できる、良い男の子よ」
「私は息子にそうするようしつけたもの。でも母親の目のない状況でどうしているか、わからないのよ」アマンダは言った。
「彼は元気にしている」私は繰り返したが、母がいなくて落ちこんで弱々しくなっていると話したほうが、彼女はもっと喜んだだろうと思った。アマンダには、息子が彼女から離れることは間違っていたという強い信条があった。

 パルミラは彼女の子どもについての知らせをくすくすと笑って聞いていた。私が、彼らは丸々と太って身も心も元気に動き回っていると伝えると、「そうでしょうね」と彼女は言った。「彼らは私をよく困らせたもの」

 私は笑って言った。「アーロンは(8)スピットボールを飛ばしてしまうから、頭に(9)フールキャップをかぶせて隅のほうに座らせられていたわ」
「まさに彼らしい」彼女は言った。「ええ、彼らは今まで通り自由にはできないでしょうね」彼女は続けた。「まあ、あなたが教育をしているなんてね、ベッキー。教えるのは好きなの?」
「好きよ」 私は言った。「私が今までしてきたことの何よりも好き」
「ええ、あなたが賢いことはずっとわかっていたから。おそらくあなたはこれからずっと学校で過ごすのよね」

 私はそうなることを望んだ。「あなたは今月キッチンの当番になったんでしょ?」
彼女は夕食時テーブルの準備をしていた。

「そうなの、そうなることはわかっていたよ。私が今まで唯一やっていなかった当番だもの。今回私に回ってくるのは当然だね。でも、ガーデニングの担当になるまでそう長くはない、そう望んでいるわ。私はいつだってガーデニングが大好きだったの。外に出ることも。もう待ちきれない」

 アマンダは部屋の隅へそっと立ち去り、パルミラはベッドに入った。長いあいだ静かな時間が過ぎ、パルミラは眠りについたのだとわかった。私は次の日の授業について考えていた。

 

第15章訳註

(1) ランカスター法
教師一人が効率的に大人数の生徒を教えることができるように考案された、教育の手法。19世紀の初頭に提唱され、その後20世紀までのアメリカの教育法に大きな影響を与えた。
読み書き算術を重視し、身体教育を行わないことや、生徒の中に助教生(モニター)を設け、段階的に指導を行うことなどが提案された。

(2) スペンサー
英国エリザベス朝時代の代表的詩人。シェイクスピアに影響を受け、スペンサー詩体という独自の表現を編み出し、詩集「牧人の暦」、長編叙事詩「妖精女王」などの作品をのこした。

(3) ジョン・ダン
イングランドの詩人、後半生にはイングランド国教会の司祭を務めた。
形而上詩人の先駆者として位置づけられ、優れた教養と詩の才能を持ち、複雑な言語によって、恋愛詩、宗教詩、講話を書いた。
1598年にトーマス・エガートン卿の秘書に任命されるも、その姪であるアン・モアと密かに結婚したことが原因で投獄され地位を追われた。

(4)ベーコン
イングランドの貴族で、哲学者、神学者、法学者、政治家。「知識は力なり(Ipsa scientia potestas est)」という言葉に代表されるように、帰納法を提唱し、既存の知の体系を整理し、正しい知識を獲得することを哲学思想として提唱した。1597年に出版された『随筆集』には、10編のエッセイが書かれている。

(5)湯浅信之編『ジョン・ダン詩集:対訳』岩波書店,1995 より

(6)ソネット
ヨーロッパ叙情詩の一形式。13世紀イタリアに始まり、14行からなる。四・四・三・三、または四・四・四・二の行構成をとり、脚韻をふむ。

(7)ソネット集94番
シェイクスピア風ソネットはその代表的な形式のひとつで、文中の夏の花のソネットはシェイクスピアのソネット集の94番の内容を指していると思われる。訳は学生によるもの。

(8)スピットボール
紙を噛んで小さな球または塊にしたもの。

(9)フールスキャップ
道化師の帽子を模した、コーン形の被り物で、態度の悪い生徒が罰として被せられることがあった。

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